役員メッセージ

自らの挑戦が、
やがて社会を支える触媒になる。
試行錯誤の積み重ねが、
環境とエネルギーの未来へと
つながっていく。

執行役員/研究開発センター長

吉村 昌寿 Masatoshi Yoshimura

モビリティからクリーンエネルギーまで幅広く支える触媒
高度化する要求に応え続け、環境とエネルギーの未来をかたちにする

当社は、自動車の排ガス浄化触媒や工業製品の製造過程に使用されるプロセス触媒、燃料電池用の電極触媒などを開発・提供している貴金属触媒メーカーです。触媒開発のやりがいは、日々の研究開発を通じて性能を向上させる喜びに加え、その成果が自動車や大型プラントに採用され、環境保全や持続可能な社会の実現に貢献しているという実感を得られることにあります。

特に近年、自動車や化学プラントの環境への有害物質の排出に関し、社会からの要請は厳しくなり、これに応える形で触媒への要求が厳しさを増しています。自動車用排ガス浄化触媒においては、エンジンの省エネ性能向上に伴い、低温時に発生しやすくなる有害成分の除去性能に加え、高騰する貴金属の使用量を極限まで低減させつつ性能を維持・向上させることが強く求められています。このような難題に対し、自動車メーカーや化学メーカーのプロフェッショナルと議論を交わしながら、次世代のスタンダードを創り上げていくことこそ、当社の研究・開発の醍醐味といえます。

現在、注力しているのはクリーンエネルギー分野です。特に、1990年代後半に研究開発を始めた燃料電池用の電極触媒において、当社は業界トップレベルの実績と知見、データを蓄積していると自負しています。さらに、空気中の窒素とグリーン水素を反応させて「グリーンアンモニア」を合成する触媒や、アンモニア燃焼後の排ガスをクリーンにする環境触媒など、未来のインフラを支える技術開発に取り組んでいます。

これら最先端の触媒開発を加速する武器が、シミュレーションとMI(マテリアルズ・インフォマティクス※)です。例えば、自動車の排ガス浄化触媒の開発において、従来行われていた時間とコストのかかる実車・エンジン試験に対し、現在はまだすべての試験を代替できる段階にはありませんが、シミュレーションを用いれば、多様な条件下での性能を予測し、開発期間と開発コストの削減が可能になります。

また、AIや統計手法、機械学習を用いるMIは、触媒開発そのものを革新する可能性を有しており、MI活用による材料の選択・設計の加速に挑んでいます。さらに、最近進展が著しい分子動力学手法を用いることで、かつては数十原子の活性点、反応点の計算に何日も要していたものが、実際の触媒に近い数百原子規模のモデルでも短時間で計算できる可能性が示されています。今後も最先端のシミュレーション技術を取り込み、触媒をどう設計すれば、最高の性能を発揮できるかをシミュレーションできる環境を、さらに整えていきます。

  • ※MI(マテリアルズ・インフォマティクス):機械学習やAIなどの情報科学技術を活用し、膨大な実験データや論文から新素材の探索や特性予測を効率化する手法

人と技術、グローバルな連携が一体となり、高性能な触媒を生み出す
主体的に学び挑戦できる環境で、
一人ひとりが自分の可能性を広げていく

当社の最大の強みは「人」です。手前味噌かもしれませんが、優秀なメンバーが協力しながら仕事に向かっているからこそ、ビジネスパートナーの厳しい要求をクリアした高性能な触媒を開発できるのだと確信しています。この強みには、グローバルな連携も含まれます。世界最大の化学メーカーBASFとの技術連携により、海外のトップレベルの研究・技術者と頻繁に情報共有・意見交換を行なっており、排ガス浄化触媒や燃料電池電極触媒の開発に関わるメンバーは年に数回、海外サイトを訪問しています。

もうひとつの強みは、国内有数の分析・評価設備を備えていることです。大学の最先端研究室に匹敵する高度な分析装置をはじめ、実車を用いて分析・評価を行える「エンジンベンチ」を多数揃え、これらの設備を用いて得られた精緻な分析・評価結果を触媒改良にタイムリーに活用できることは、触媒開発を進める上での当社の大きな強みとなっています。

また、当社では、研究・技術者が主体的にキャリアを切り拓ける制度が整っています。そのひとつが、博士号の取得支援制度です。当社では、大学や国立の研究機関と共同研究を行う機会も多く、これらの共研等を通じて修士卒で入社したメンバーが博士号を取得できるチャンスがあります。本人が希望すれば、会社として博士号の取得を全面的に支援します。実際、社内では常に数名が社会人博士課程に在籍し、仕事と両立させながら取得を目指しています。他にも、学歴やバックグラウンドに応じて、放送大学等を活用した学士取得制度も整えています。

当社では、早くから裁量を与える風土があり、入社2〜3年目から顧客へのプレゼンテーションを経験するなど、若手のうちから多様な挑戦機会が広がっています。
そうした成長を支えるため、日々の業務における相談や目標設定・評価・フィードバック面談など、上司と継続的に対話する機会を設けています。また、キャリアプラン申告制度や社内公募制度など、自ら描くキャリアの実現を後押しする仕組みも整えています。

研究開発センターには、化学、薬学、生物系、生化学系(農業系)など、多様な専門性を持つ人材が揃っています。彼らがお互いに学び合い、成長できる職場にしたいというのが、研究開発センター長である私の思いです。
触媒の分析・評価は長時間に及ぶこともありますが、その分、フレックス制度をはじめ、休暇取得がしやすい環境を整備しています。近年では、男性社員の育休取得も当たり前となり、柔軟な働き方ができる職場だといえます。

当社が求めるのは「自分で調べ、考え、行動に移せる」、いわゆる主体性を持った人材、そしてチームでのコミュニケーションがしっかり取れる人材です。現在、基礎開発部のシミュレーションチームで活躍している、ある社員は、入社時点ではITやプログラミングの専門スキルを有していませんでした。しかし、「これからは計算科学との融合が必須になる」との考えに基づき、プログラミングやシミュレーションの手法を学び、今やシミュレーションを用いて社内各所の課題を解決し、会社を牽引するフロントランナーとなっています。彼のように自身の能力を開花させ、会社を横断的に活躍できる人材が数多く育ってくれることを願っています。

今、時代は「カーボンニュートラルの実現」という地球規模のパラダイムシフトを迎えています。この変革期において、エネルギーの転換やクリーンな社会の構築を支えるキーテクノロジーである触媒の重要性は、さらに高まっていきます。自らの手で優れた触媒を開発し、持続可能な社会と会社の成長に貢献したい。そんな熱い思いを持った皆さんに、お会いできることを心より楽しみにしています。